「少しずつ」と「少しづつ」このような言い回しの場合、「あれ?どっちだっけ?」「どっちが正しいの?」と迷ったことありませんか?ふと忘れてしまうことありますよね。
今回は、「ずつ」と「づつ」の違いや語源について紹介していきたいと思います。
もくじ
○「ずつ」と「づつ」の違いは何?
○「ずつ」と「づつ」の語源は?
○「ずつ」と「づつ」どっちが正しい?どう使い分ける?
○「ずつ」と「づつ」の違いは何?
実は「ずつ」と「づつ」は同じなんです。
「いやいや、学校でバツされたよ。」という声が聞こえてきそうですが、本来はどちらでも構わないのです。じゃあ、どうして「ずつ」しか使われないのか、という疑問が湧きますよね。
「ずつ」と「づつ」の大きな違いは
「ずつ」=現代仮名遣い
「づつ」=歴史的仮名遣い
そして現在は、現代仮名遣いを使用することになっており、一般的に「ずつ」を使うよう決められているのです。
これは昭和61年の「現代仮名遣いについての内閣告示、内閣訓令」により明確にされました。
内閣訓令の5項目に次のような語には「ぢ」「づ」を用いて書く、と決められたのですが、複雑で繊細な日本語を一律に分別する事は難しく、いくつも特例が作られました。
”次のような語については(略)、「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし(略)「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする”という補足があって、それに当てはまる語として「ひとりずつ」が挙げられています。
要するに、基本的には「ずつ」を使うように決めるが「づつ」を使っても良いですよ、という意味になっています。
○「ずつ」と「づつ」の語源は?
ものを数えるときに「1つ」「2つ」「3つ」と「つ」が付いていますよね?
「ずつ」の語源はものを数えるときの音の「つ」を重ねたものだと言われています。
「デジタル大辞泉」には
“「一つ」「二つ」の「つ」を重ねたものか。中古から用いられる。”
初めて使われたのは「精選版日本国語大辞典」によれば
“伊勢物語(10世紀前)「鳥の子を十づつ」
源氏物語(1001〜1014年)紅葉賀「やうやうすこしづつさはやい給ひける」”
そして「大辞林第三版」には「ずつ」の使い方を補足して
“現代仮名遣いでは「ひとりづつ」のように「づ」を用いて書くこともできる”とあります。
古くからある言葉で元々は「づつ」だったものが、現代仮名遣いになって「ずつ」になったので間違いではない事が資料からもわかりますね。
○「ずつ」と「づつ」どっちが正しい?どう使い分ける?
「ずつ」と「づつ」は、どちらが正しいのか、という問いに対しては
どちらも正しいが一般的には「ずつ」を使う、というのが答えになります。
「ずつ」も「づつ」も間違いではありませんが、教科書や新聞では「ずつ」が使われていますので、試験や公文書では「ずつ」を使わなければいけません。
だから、学校で「づつ」と書くとバツをされるんですね。
特に使い分ける必要はなく、常に「ずつ」を使用すれば問題無いですし、自分の日記や私的な文章であれば「づつ」でもOKと覚えておきましょう。
ここまではご理解頂けたかと思いますが、では、なぜ「ずつ」と「づつ」がこんなにもややこしい状況になったのかを解説したいと思います。
現代仮名遣いの内閣訓令では「じ、ぢ、ず、づ」の使用について、表記の慣習を尊重して一定のルールが定められました。
(1)同音の連呼によって生じる場合は「ぢ」「づ」を使う。
例) ちぢみ(縮み) つづく(続く)
(2)二語の連合の場合も「ぢ」「づ」を使う。
例) はなぢ(鼻血) てづくり(手作り) にいづま(新妻) みかづき(三日月) つねづね
ここまではまだ納得できますね。ところが、続きに
“なお、次のような語については、現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として、それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし、(略)「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする。”と特例が挙げられています。
例) さかずき みみずく せかいじゅう(世界中) いなずま(稲妻) ひとりずつ
しかも、まだ続きに[注意]として“次のような語の中の「じ」「ず」は、漢字の音読みでもともと濁っているものであって、上記(1)、(2)のいずれにもあたらず、「じ」「ず」を用いて書く。”と更に特例が挙げられています。
例) じめん(地面) りゃくず(略図)
これを読んで「なるほど〜!」と思えた貴方は本当に素直な方ですね。
個人的には、かなり解釈の違いが生まれそうな印象を受けます。
「ずつ」の語源が「一つ、二つ」の「つ」が重なったものなら、(1)の同音の連呼とも解釈できます。
「ひとりずつ」で見れば、「ひとり」と「づつ」の(2)の二語の連合に当てはまると思えませんか?むしろ、にいづま(新妻)の方が分解できない気がします。
うーん、ややこしい!
きっと、こんな混乱が起きるのは目に見えているので「じ」「ず」を使うけれど、「ぢ」「づ」でも大丈夫という曖昧な決定になったんでしょうね。
色んな議論がされたんでしょうが、一語一語決めていくのは途方も無い作業ですから、ややこしい言葉は許容するという手段が選ばれたのだと思います。
まとめ
今回、「ずつ」と「づつ」について違いや語源、使い方などを調べてみて、改めて日本語の奥深さを感じました。
言葉というのは時間と共に生活の中で変化していくものなので、今後も現代仮名遣いは変わっていくと思います。
和製英語もどんどん増えてきて、古くから存在する多様で繊細な日本語が使われなくなってきているので意識的に大切に使っていきたいですね。
お子さんが文字の習いたてで「ずつ」と「づつ」の使い方を勉強する頃にこの話をしても難しいかもしれません。むしろ、「間違いではないんだよ。」と言うと混乱しそうです。もっと文字の成り立ちや分法を理解できるようになった頃に教えてあげるといいですね。大人の雑学としてちょっとした会話のネタにお使いください。